磁化方向・着磁仕様・図面管理ガイド
磁化方向とは:磁石の着磁方向と磁極パターン
要点:磁化方向(着磁方向)とは、完成した磁石のN極・S極をどの方向と位置に配置するかを示す仕様です。軸方向、直径方向、ラジアル、多極といった名称だけでなく、機械基準、観察方向、供給状態、測定位置・経路・合否判定まで図面に定義します。
磁化方向と着磁方向は、完成品の磁極配置を示します
磁石の図面や調達仕様では、「磁化方向」と「着磁方向」が完成品のN極・S極の方向を示す言葉として使われます。同じ材質、グレード、外形寸法でも、どの面・方向に磁極を置くかによって、組立方向、利用できる磁界、検査方法、取扱いが変わります。一方、異方性材料の配向方向と、完成品に要求する磁極パターンは同じ意味ではありません。材料の配向、加工形状、着磁治具、組立状態が実際のルートで整合するかを確認する必要があります。
| 着磁パターン | 図面で示す内容 | 曖昧になりやすい点 |
|---|---|---|
| 軸方向着磁 | 軸または厚み方向、管理する端面、必要な極性 | 「軸方向」だけで、どちらの面をN極にするか不明 |
| 直径方向着磁 | 直径方向の軸、平面・切欠・キー溝等との角度関係 | 円周方向の位置決め基準がなく、組立時に回転方向が定まらない |
| ラジアル着磁 | 内周・外周の極性、径方向、リングまたは組立状態 | 「径方向」と「内外周ラジアル」の意図が混在する |
| 多極着磁 | 極数、極ピッチまたは基準角、極配列、開始位置、観察方向 | 交互極だけを描き、開始基準や極位置の検査条件がない |
| アーク・ロータ用 | ロータ中心、内外径側、セグメント順序、取付方向、組立状態 | 単品状態の極性と、完成ロータで必要な磁界を混同する |
Engineering Evidence · EM-JP-01 · Revision A
磁気仕様を機械基準に結び付ける図面例
下図は、直径方向着磁リングの極性を基準面A、観察方向、着磁済みの供給状態、検査位置に関連付ける考え方を示します。図中の関係はオリジナルの説明例であり、特定案件の角度、磁束密度、公差、設備能力を示すものではありません。
| 管理項目 | 図面上の関係例 | 検査で再現する内容 |
|---|---|---|
| 観察方向 | B面側から見る | 同じ面と同じ機械方向で極性を判定 |
| 円周方向基準 | N極中心を基準面Aに関連付ける | 角度ゼロを実物の平面または基準形状に合わせる |
| 供給状態 | 着磁済みで供給 | 組立前の取扱い、表示、極性確認を同じ状態で行う |
| 磁気判定 | 定義した位置と距離で測定 | 測定機器または方法、治具、位置、特性、サンプリングを一致させる |
単品着磁か、組立後着磁かを先に決める
着磁工程をどこに置くかは、取扱いだけでなく、磁極位置、治具、組立公差、周辺部品、検査状態にも影響します。次の表は判断を始めるための整理であり、どのルートが可能かは実際の材料、形状、配向、治具、組立と数量で確認します。
| 供給・工程状態 | 検討しやすい場面 | 図面・工程で確認する項目 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 単品を着磁して供給 | 単品で極性と磁気特性を確認し、組立方向を管理できる場合 | 極性、方向マーク、取扱い、吸着防止、単品検査条件 | 組立時の吸着、反発、異物、姿勢ずれ、接着・圧入作業への影響 |
| 未着磁で供給 | 顧客工程または後工程で着磁する計画があり、材料配向と形状が適合する場合 | 未着磁状態、配向方向、後工程の治具基準、着磁後の検査責任 | 後工程で必要な磁界、治具と安全条件を事前に確認する |
| 組立後に着磁 | ロータ、リング、複数磁石、ハウジング等を一体状態で極位置に合わせたい場合 | 完成組立の基準、周辺材料、エアギャップ、着磁アクセス、完成状態の走査経路 | 組立構造、磁気回路、治具アクセス、発熱、周辺部品への影響を案件別に確認する |
多極着磁は、極数だけでなく基準と検査を一緒に指定する
多極リング、ディスク、ロータでは、極数が同じでも、極ピッチ、開始位置、観察方向、極幅、部品の偏心や組立状態によって、必要な磁気波形と検査結果が変わります。少なくとも次の入力を同じ図面または承認資料で管理してください。
| 入力 | 図面・仕様での定義 | 検査側の確認 |
|---|---|---|
| 極数と極配列 | N/Sの交互配列、必要な非対称パターン、開始極 | 一周または管理範囲で極数と順序を確認 |
| 極ピッチ・基準角 | 機械基準からの角度、ピッチ、許容する位置関係 | 同じ基準を治具またはエンコーダの角度ゼロに使用 |
| 観察方向 | どの面・方向から極配列図を見るか | 図面と測定データの回転方向を一致 |
| 測定高さ・距離 | 表面または基準面からの測定位置 | プローブ姿勢、距離、押付けや治具状態を再現 |
| 走査経路 | 円周、直線、指定点、完成品の機能位置 | 同じ経路、速度、点数または角度間隔で取得 |
| 判定特性 | 極性、磁束密度、磁束、波形、極位置または機能試験 | 対象特性に合う方法と合否基準を使用 |
着磁治具と可否は、実際の形状・材料・極数で確認する
一方向の着磁と、多極・内周・外周等の着磁では、必要な磁気回路と治具の考え方が異なります。特に多極着磁では、対象となる着磁面、磁石形状、極数、材料の配向と必要な磁界に合わせた検討が必要です。同じ治具が異なる直径、長さ、極数、材料にそのまま使えるとは限りません。
そのため、Elite Magnets の技術検討では、一般的な設備名称から可否を断定せず、実際の図面、材料候補、着磁状態、数量、検査特性を確認してからルートを提示します。公開ページ上の説明は、特定の設備、最小極ピッチ、最大磁界、許容差を保証するものではありません。
図面リリース前の確認順序
- 完成品で必要な機能を定義する:吸着、保持、検出、トルク、回転位置、磁気波形など、使用位置で守る特性を確認します。
- 材料・形状・配向を整合させる:材料候補、加工形状、磁化容易方向、薄肉部や組立制約を合わせて検討します。
- 磁極図を機械基準に結び付ける:面、軸、穴、平面、キー溝、切欠、マーク、組立基準のいずれかに極位置を関連付けます。
- 着磁工程を決める:単品着磁、未着磁供給、組立後着磁の責任範囲と取扱いを決めます。
- 検査を同時に定義する:部品状態、観察方向、位置、距離、走査経路、特性、合否判定、記録をそろえます。
- 図面・極性図・検査計画を同じ改訂で承認する:変更時に一部だけが古い状態で残らないよう管理します。
見積・技術検討に必要な資料
- 2D図面、可能であれば3Dモデル、部品の組立位置
- 材料候補または必要な磁気・温度・環境条件
- 着磁方向、極性図、極数、極ピッチまたは基準角
- 機械基準、観察方向、方向マークの要否
- 単品着磁、未着磁供給、組立後着磁の希望
- 測定位置、測定高さ、走査経路、必要な波形または磁気特性
- 試作数量、年間数量、組立方法、必要な検査記録
材料ルートは、焼結NdFeB磁石、焼結SmCo磁石、ボンドNdFeB磁石の各ページで比較できます。図面を共有する場合は見積依頼フォームをご利用ください。
着磁仕様を図面に確定する前に、カスタム製造・DFM対応と品質管理・検査計画をあわせてご確認ください。
技術上の注意:着磁可否、得られる磁界、極位置、波形、検査方法は、実際の材料、配向、形状、治具、組立状態、周辺部品、数量によって変わります。量産仕様は、承認図、承認サンプル、検査計画と実際の工程条件を基準に決定してください。

よくある質問
図面に「軸方向着磁」と記載するだけで十分ですか。
十分ではありません。N極・S極の位置、機械基準、組立前後の着磁状態、測定経路、測定距離、合否基準まで定義します。
多極着磁パターンはどのように検査しますか。
極数、極ピッチまたは基準角度、測定高さ、走査経路、波形または磁束密度の目標値、公差、承認治具を一組で指定します。
